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「 【09年上半期・絶対に観て頂きたい洋画】 」
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【レスラー】(監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ)

・昨年のヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)受賞作品。当時、所詮は話題性重視の日本では、宮崎駿と押井守と北野武の最新作がこぞってコンペディションに出品されたことが先行した。ただ、この映画を観て納得出来るのは、単純に「あぁ、良かった」と、グランプリにふさわしい作品だったと感化されること。愚鈍だけれど、一途で優しい初老の“レスラー”のお話。


・ランディは、20年前は「神の羊」と称された人気レスラーだった。彼はプロレスを心から愛していた。「プロレス」のリングに上がりたい己の気概を良し、とした彼は、例え老いぼれて老眼が必要になった年になっても、規模が地方の小さなプロレス団体に成り下がったとしても、観客に極上の娯楽を捧ぐ為、リングに、ひたすら上がり続ける。

 ランディには、家族がいた。

 娘もいた。人気絶頂の頃、彼はレスラーであり続けるために、自分の娘の存在を「忘れよう」とした。決して家庭を顧みなかった彼は娘に罵られる。でも老いぼれランディは、娘に許しを請いたかった。ありきたりだが娘の為に、服を買ってやろうと思った。……彼女の服の好みなんて、知る由も無かったけれど。

 ランディには、愛している人がいる。

 場末のストリップ・バーで働くショー・ガール。長年、常連客だった彼は、彼女をカタギに戻したいと真剣に思っていた。彼女もまた、彼の一途な想いを受け止めたかった。ある日、ランディは彼女と二人きりで「ビール1杯のあいだだけ」という約束で、束の間のデートをする。ストリップ・バーではない、80年代の曲の掛かるレトロなバー。「80年代は最高だった!」と踊るランディ。「同感ね」と笑うレディ。同じ年代を過ごしたとしても、彼らは結局、住む場所が違うけれど。

 ランディには、大勢の仲間がいる。

 ランディの過去の栄光は、多くのレスラーにリスペクトされている。リングでランディを罵り、叩きのめす悪役レスラー。その若者もランディを敬愛していた。試合後、控え室で彼はランディに「よくやった!」と称賛される。彼は笑顔で「ありがとう」と答える。傷だらけのランディを温かく迎えるレスラー達は、互いの対戦相手の健闘振りを称えあう。そこに、「ヒーロー」だとか「悪役」の垣根は無く、純粋なエンターテイナー達がいた。皆が皆、「レスラー」であることに誇りと固い使命を持ち合わせているから。

 ランディには、時間が無かった。

 長年のドーピング注入で老いた体は悲鳴を上げ、代償に爆弾を残してしまう。足でも、腰でも、はたまた腕でもない。心臓だった。彼に生きられる場所はあるか。胸の奥の爆弾を抱えた、ラム(神の羊)は己の不安と焦りを持ったまま、天に捧げられていいのか。しかしランディはおのずと道を見出す。


 ランディには、答えは一つしか無かった。





・本作、公開初日の夜に憤死した三沢光春氏に捧ぐ。プロレス好きだとかそうでないとか関係なしに、「プロレスラー」たる人間がどのような意志で年中ずっと、休むことなく過酷にリングに上がるのか、もしくは“上がり続けようとするのか”をドキュメンタリータッチで丁寧に日常描写を切り取っている映画です。主演はミッキー・ローク。多分、その昔「猫パンチ」で日本中を色んな意味でノックダウンさせた男。栄光と挫折。まるで彼自身の生き様を投影させたランディ・ラムを演じる、その表現力に感服です。ラスト10分で、私の涙腺が弾け飛び、ひたすら涙を拭うことしか出来ませんでした。純粋なまでに、まさしく“愚鈍で一途”な男の辿り着く結末に、切実さと哀愁を感じずにはいられなかったのです。内容が「R-15」なだけに先日の「ディア・ドクター」以上にお勧めしにくい作品ですが、それでも“観て欲しい”という気持ちが萎えている訳ではありません。「猛々しく、なおも美しい世界」がスクリーンから如実に迫って来るオープニングから、是非驚いてください。必見です。

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