[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
【2011年・日本映画ベスト10】
第1位:「一枚のハガキ」
(監督:新藤兼人/出演:豊川悦司、大竹しのぶ)
第2位:「大鹿村騒動記」
(監督:阪本順治/出演:原田芳雄、大楠道代)
第3位:「平成ジレンマ」
(監督:齊藤潤一/ドキュメンタリー)
第4位:「冷たい熱帯魚」
(監督:園子温/出演:吹越満、でんでん)
第5位:「青空どろぼう」
(監督:阿武野勝彦、鈴木祐司/ドキュメンタリー)
第6位:「八日目の蝉」
(監督:成島出/出演:井上真央、永作博美)
第7位:「その街のこども 劇場版」
(監督:井上剛/出演:森山未來、佐藤江梨子)
第8位:「CUT」
(監督:アミール・ナデリ/出演:西島秀俊、常盤貴子)
第9位:「あぜ道のダンディ」
(監督:石井裕也/出演:光石研、森岡龍)
第10位:「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」
(監督:寺本幸代/声の出演:水田わさび、大原めぐみ)
【日本映画・個人賞】
監督賞: 新藤兼人 (一枚のハガキ)
脚本賞: 阪本順治、荒井晴彦 (大鹿村騒動記)
主演男優賞: 原田芳雄 (大鹿村騒動記)
主演女優賞: 大竹しのぶ (一枚のハガキ)
助演男優賞: でんでん (冷たい熱帯魚)
助演女優賞: 大楠道代 (大鹿村騒動記)
新人男優賞: 森岡龍 (見えないほどの遠くの空を)
新人女優賞: 二階堂ふみ (劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ)
【日本映画・総評】
2011年、始まってすぐに「その街のこども」という傑作が公開され、それが皮切りとなり、様々なジャンルから面白い作品が飛び出してきた印象的な邦画豊作年となった。
公開から1週間で大震災が起き、あまり話題に上がらなかったものの、9.11を総括したような第10位。父親の尊厳の滑稽さと偉大さ、両方を描き切った第9位。理想とすべき映画狂を見せつけられ、観ている側が背筋を正さずるを得ない第8位。震災のもたらした深い深い傷を必死になって呼び起こし、そして互いに癒す男女に涙した第7位。無垢な愛情の悲劇を深淵な心理描写で活写した第6位。原発事故の事例だけでは無い、国と地方と企業ぐるみの人災を追求する第5位。名言連発&明る過ぎるキチガイが善人を掌握するという、ブラックな笑いがひたすら楽しい第4位。マスコミバッシングの正当性、学校教育の価値観の根底を揺るがした、ドキュメンタリー邦画として近年最高傑作の第3位。練りに練られた脚本、豪華キャストの乱れ打ちで、潤沢な笑いを生み出す奇跡に満ちた群像喜劇の第2位。99歳の映画監督の怨念に似た情念が作品全体に乗り移ってはいるが、仄かに薫るユーモアを絶妙なエッセンスとして盛り込み、反戦映画の極みとしての地位を底上げしている、まるで若々しいような超傑作の第1位。
上位にゆくにつれ、確かに映画的興奮と楽しさ、さらには慈しみさえも感じられる作品を選んだ。どれも丸っきりシャンルは分離している。だが日本人気質に富んだ純粋な日本映画には、そのような隔ては関係ないのである。私にとって、珠玉のベストテンとなった。
【2011年・外国映画ベスト10】
第1位:「未来を生きる君たちへ」
(監督:スザンネ・ビア/出演:ミカエル・パーシュブラント、トリーヌ・ディルホム)
第2位:「ラビット・ホール」
(監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル/出演:ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート)
第3位:「ブラック・スワン」
(監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル)
第4位:「サラの鍵」
(監督:ジル・パケ=ブランネール/出演:クリスティン・スコット・トーマス、メリュジーヌ・マヤンス)
第5位:「ゴーストライター」
(監督:ロマン・ポランスキー/出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン)
第6位:「わたしを離さないで」
(監督:マーク・ロネマク/出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド)
第7位:「この愛のために撃て」
(監督:フレッド・カヴァイエ/出演:ジル・ルルーシュ、エレナ・アナヤ)
第8位:「ヒア アフター」
(監督:クリント・イーストウッド/出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス)
第9位:「ヤコブへの手紙」
(監督:クラウス・ハロ/出演:カーリナ・ハザード、ヘイッキ・ノウシアイネン)
第10位:「悪魔を見た」
(監督:キム・ジウン/出演:イ・ビョンホン、チェ・ミンシク)
【外国映画・個人賞】
監督賞: スザンネ・ビア (未来を生きる君たちへ)
脚本賞: アナス・トマス・イェンセン (未来を生きる君たちへ)
主演男優賞: ミカエル・パーシュブラント (未来を生きる君たちへ)
主演女優賞: ニコール・キッドマン (ラビット・ホール)
助演男優賞: アーロン・エッカート (ラビット・ホール)
助演女優賞: オリヴィア・ウィリアムズ (ゴーストライター)
新人男優賞: 該当者なし
新人女優賞: メリュジーヌ・マヤンス (サラの鍵)
【外国映画・総評】
2011年は日本映画もそうだが、それ以上に外国映画も実り豊かで、正直ベストテンを形成するのに相当時分、掛かってしまった。しかしベストテンを振り返ってみると、アカデミー賞受賞作の少なさに改めて驚く。外国映画賞を受賞したスザンネ・ビア監督の「未来を生きる君たちへ」や、ナタリー・ポートマンが主演女優賞を獲得した「ブラック・スワン」が入っているだけ。だが、そもそも前者のスザンネ・ビア監督は、国際的に実力の高い作品を連発することでも知られるので、一概にアカデミー賞の範疇で考えるのは愚論である。
結局のところ、昨年のアカデミー賞は保守的なイメージから抜け出ていないというのが証明された。前哨戦である、全米各地の批評家協会賞では軒並み、現代の若者とネットの密接性、一人の若者の皮肉めいたサクセスストーリーを描いた「ソーシャル・ネットワーク」が熱狂的に歓迎された。しかし、アカデミー賞ではそのような初々しい現代ドラマではなく、史実に基づいたヒューマンドラマ「英国王のスピーチ」が選ばれたのだ。私的には、「英国王のスピーチ」は傑作であると考えている。しかし、だからこそ、ありきたりな部分もあったりもする。堅実な、無難な、大衆一般的な作品を選出するのがアカデミー賞なのである。
いまや、非ハリウッド製映画の飛躍ぶりは顕著なものとなりつつある。韓国映画でも第10位のような強烈快作もあれば、第9位のように神格を体現する人間のエゴを優しく紡ぐ宗教映画が、最北欧のフィンランドから生まれ、日本でも容易に鑑賞することが出来、映画自体が有意義な推察を設けてくれた。
今年のベストテンにも、勿論、ハリウッド映画はそれなりに多くランクインしている。しかし、何の為の"外国映画"という括りなのかと思うと、今よりさらに、もっともっと私自身の視野も広げなければいけない、と猛省しきりに尽きるのだ。現状に甘んじてはいけない。