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「 姉が帰って来た。 」
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 昨年10月に結婚した姉は、つい最近、今年の8月初めに女の子の赤ちゃんを出産した。その後1ヶ月は、刈谷市にある新居にではなく、コチラの実家のほうで静養していた。別に何事も無く、無事産後1ヶ月を順調に過ごし、そのまま新居に戻っていった姉。……ではあったが、胸につっかえを感じるような懸念が的中してしまう。結構かなりのママさん達が通る道、「産後鬱」というものだ。しかし、姉の場合、さらに特殊だった。慣れない育みの中、赤ちゃんが腸の病気に掛かり、一時危篤状態にまで陥ってしまった。9月の終わりの事だった。その第一報を知らされた時、私は「あぁ、あんなに丹念に準備して、赤ちゃんを育てる一歩をやっとやっと踏み出したのに」と愕然とし、将来は「オッチャン」と呼ばれる立場が楽しみだった私の感情は脆くも痛打されたのであった。しかし、無事に峠を越え、一息吐いた所で、とうとう姉貴がプッツン。本格的な鬱の一歩手前の、ボロボロ状態で本日、二度目の療養で帰省。症状も悪化しているようで、母がちょっと叱っただけでも大泣きしてしまう始末。これからの不安と不満を誰にぶつけて良いのか分からないまま、姉貴は暫く休むことになったのだ。

 ただ、一緒に帰って来た赤ちゃんはぷっくらと太っていた。亀井静香に似ていると評判(?)の顔立ちにも益々磨きが掛かり、こりゃあ亀井静香何ぞよりも大物になるに違いあるめぇ、と掌を顎に宛がい、フンフンと目論む私。危篤時には、立ち会った母曰く「死相が出ていた」という。その際には「亀井静香が死に顔に変わるのか!」と、不謹慎なのかどうなのかもよく分からない、だけれど焦燥入り混じる困惑が家族間に蠢いていたのは言うまでも無い。今となっては、亀井静香に戻った、いやそれ以上の「どや顔」を携えている赤ちゃんの表情を窺えるだけでも、何故か安心してしまう。だから、姉貴もきっと大丈夫、という結論。何故なら、間違いなく亀井静香を生んだ、肝の据わった体(?)。そう簡単にくたばることはない、と私は信じて止まない。

 産後鬱という一時的な足踏みも軽々、吹き飛ばし、また新鮮な一歩を噛み締めればいい。
 私も色々と足踏み状態。夢も希望も展望も何も示唆しようともしてくれない世の中だけれど、こんな自分にも取り得がある筈だと信じて、模索して、進んでいきたいものだ。

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