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【ディア・ドクター】(監督:西川美和/出演:笑福亭鶴瓶、瑛太)
・初日、ヱヴァンゲリヲンと梯子して観たのですが、ヱヴァンゲリヲンに関しては、既に私なんかより思い入れのあるファンの方というのは沢山いらっしゃる訳で、私なんかが「じゃあ序に続いて、本作の見所を!」と息巻いても仕方がありません。語った所で、それはこれから観に行く人のテンションを殺いでしまうというもの。しかし、前作以上に普遍的なテーマに富み、さらに挑戦といえる奇抜な演出(ことごとく、映画の主題を強調している)が施され、さらにアニメ版のファンの方の期待を軽やかに裏切るであろう心地良さは、きっとたまらないであろうと思います。素晴らしい娯楽作品、には違いないので、それはそれで置いといて。私が本当にお勧めしたいのは、今年上半期現在、51本観た全邦画、「人間の本質」を本当に巧みに描いた秀作「ディア・ドクター」なのです。
・ストーリーの舞台は山間の小さな、しかし長閑で美しい農村。その村のたった一人の医者、伊野先生。無医村と呼ばれていた村に赴任してきた伊野先生は、村人から神様や仏様以上に慕われる唯一神の存在で、厚く慕われておりました。しかし、ある日、伊野先生は思い立ったように診療所から出かけていったきり、とうとう戻っては来ませんでした。失踪です。映画は、この失踪した日の晩から始まり、事件を担当する刑事たちが、先生の周りを取り囲んでいた人々から聞き取り調査をしている場面を挟みながら、失踪以前のエピソードを回想していく展開です。一見、ミステリーサスペンスの様相を呈してもおかしくない構成ですが、本題は謎解きではないのです。その謎解きの要素は早々に、解決してしまうのです(無医村、たった一人の医者、という設定だけを考えてみても、粗方のカラクリは読めてしまいます)。物語の主幹は漠然としてしまいますが、「人間の本質」なのです。ただ、ただ、人として……。何が出来るのか。“医者が誰一人、本当に存在しない無医村”に携わることになった伊野先生。きっと、どの医者よりも尊敬に値するのでしょう。町医者の息子で、ボンボン育ちの研修医の青年は、当初怪訝していたのにも関わらず、「真剣に村人と向き合い、問診する」伊野先生の姿にすっかり感心し、「ボクの父は結局、利益しか求めない人間なんだ! 先生のような、先生ではない!」と訴える。その通りなのです。“利益を求めず、ただ黙々と、自分を待つ人々の為に”。さらに伊野先生扮する、つるべえ師匠の人柄も相まって、村人との触れ合いもユーモアがあります。温かみがあります。時々、万歳三唱されるほど人望の厚い“神様”なのです。さらにさらに、大きな総合病院の救急治療でも遭遇することがあまり無い、重症患者も、余貴美子演じる看護婦と共に適切な処置で危機を乗り越えます。総合病院の先生からも「あなたがいれば、村は安泰ですね」と褒められるのです。伊野先生は、村人達の名医なのです。
ただ……、この伊野先生、ちょっと、事情が違うようです。
・伊野先生の出す胃薬を飲まない、八千草薫演じる農家のお婆ちゃんが物語に絡み出してから、展開が矢継ぎ早に変わっていきます。たった一つの契りから生じる歪みが、サスペンスを軽く飛び越えていきます。お婆ちゃんとの契りから繋がる、伊野先生の深奥にあった筈の真意と重なり、それが彼を突然の失踪へと誘うのです。ひいては、「すべて、人間のあるべき本質、そして良心」が浮かび上がってくるのです。例えば、“成り行き”という仕方の無かった意味を表す言葉を、意図知れず凌駕する力が、人間にあるのです。それを象徴するシーンがあります。詳しく説明しても仕方が無いのですが、回想シーンとの間に挟まれる、伊野先生失踪後の刑事の聞き取り調査の一場面。香川照之扮する薬問屋が、刑事の挑発に対して行う言動に注目して欲しいのです。観てくださるならば。そこに「ディア・ドクター」という映画に加えられている重要なエッセンスがあるのです。やや展開をネタバレしてしまい、すいません。だけれど、無医村だったからこその、農村が育んでしまった「ひとつの本物という形」、その悲しくも胸厚くなる、濃厚な人間ドラマ、そしてある種の医療問題をことごとく浮き彫りにした社会ドラマを、どうか堪能して欲しいのです。
・「映画」というのは人それぞれ好みは必ずあります。でも好みがあっても、好きだとか嫌いだとかあっても「いや、それでもボクは皆に観て欲しい映画があるんだ!」という作品が年に数回あるのですが、この西川美和監督の綿密な取材に基づいて構築された本作は、まさに「押し売りしてでも観て欲しい映画」なのです! 予告編を観て納得されても、結局は見せかけの、上辺だけの謎解きを垣間見ただけ。是非、劇場までお願いします。全国50スクリーンと少なめです。だけど、遠く足を運ぶ価値が、愛しくなるような人間の輝きが、この邦画にはあると信じて止まないのです。
ご無沙汰です。約一年ぶりの記事です。すっかり月日も巡り巡りて、当サイトも3周年が過ぎ、4年目に突入しました。私は個人的な事情(映画鑑賞以外)により、小説執筆が滞っておりますが、今現在はラミさんのサイトの小説投稿掲示板に於きまして、パワプロ9・あかつき大付属の六本木優希を主人公にした二次創作長編小説を執筆中であります。それだけに留まらず、本サイトに書き下ろす為を前提にしたオリジナル小説や、某サイトに投稿予定の二次創作集も、作成途中であります。自作小説に関しましてはこれから随時、更新の方を行って行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。尚、当サイトをご覧になっている皆様方からの投稿小説も、勿論大歓迎であります。現在も引き続き、メールにて受け付けております。是非是非、貴方の小説、当サイトに飾らせてください。
と、ここまで喋らせて頂きましたが、ここら辺でまずは今年で第2回目となりました、前年に鑑賞した劇場映画のBEST10(DARESIA賞)を発表させて頂きます。ちなみに昨年の第1回(06年度対象)のBEST1ですが、洋画1位はスティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」。邦画1位は李相日監督の「フラガール」でした。さて、今回からは洋邦画に加えまして、アニメ映画のBEST10、さらに物凄く不愉快に感じた最低映画ワースト10も勝手ながら発表していきます。一個人の嗜み程度に捉えて頂ければ嬉しい限りです。
第2回:DARESIA賞 BEST10
対象:07年1月1日~同年12月31日までに一般封切り(地域限定含む)を迎えた中で私が鑑賞した、邦画57本・洋画75本の計132作品。
邦画BEST10
第1位:「キサラギ」
第2位:「14歳」
第3位:「ALWAYS 続・三丁目の夕日」
第4位:「めがね」
第5位:「ひめゆり」
第6位:「夕凪の街 桜の国」
第7位:「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
第8位:「転々」
第9位:「河童のクゥと夏休み」
第10位:「おそいひと」
日本映画 最優秀作品賞:「キサラギ」
日本映画 最優秀監督賞:群青いろ(廣末哲万、高橋泉)「14歳」
日本映画 最優秀主演男優賞:廣末哲万「14歳」
日本映画 最優秀主演女優賞:佐藤江梨子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
日本映画 最優秀助演男優賞:香川照之「キサラギ」
日本映画 最優秀助演女優賞:永作博美「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
日本映画 最優秀新人男優賞:森永悠希「しゃべれども しゃべれども」
日本映画 最優秀新人女優賞:該当者無し
洋画BEST10
第1位:「題名のない子守唄」
第2位:「ヘアスプレー」
第3位:「世界最速のインディアン」
第4位:「善き人のためのソナタ」
第5位:「ミス・ポター」
第6位:「パンズ・ラビリンス」
第7位:「ある愛の風景」
第8位:「やわらかい手」
第9位:「この道は母へとつづく」
第10位:「僕のピアノコンチェルト」
外国語映画 最優秀作品賞:「題名のない子守唄」
外国語映画 最優秀監督賞:スザンネ・ビア「ある愛の風景」
外国語映画 最優秀主演男優賞:ウルリッヒ・ミューエ 「善き人のためのソナタ」
外国語映画 最優秀主演女優賞:クセニア・ラパポルト「題名のない子守唄」
外国語映画 最優秀助演男優賞:セルジ・ロペス「パンズ・ラビリンス」
外国語映画 最優秀助演女優賞:ケイト・ブランシェット「あるスキャンダルの覚え書き」
外国語映画 最優秀新人男優賞:ピョトル・ヤギェルスキ「僕がいない場所」
外国語映画 最優秀新人女優賞:ニッキー・ブロンスキー「ヘアスプレー」
アニメ映画BEST10
第1位:「河童のクゥと夏休み」
第2位:「アズールとアスマール」
第3位:「ピアノの森」
第4位:「ストレンヂア 無皇刃譚」
第5位:「レミーのおいしいレストラン」
第6位:「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」
第7位:「秒速5センチメートル」
第8位:「空の境界 第1章・俯瞰風景」
第9位:「鉄人28号 白昼の残月」
第10位:「秘密結社 鷹の爪~THE MOVIE~ 総統は二度死ぬ」
最低映画ワースト10
第1位:「劇場版 灼眼のシャナ」
第2位:「フランドル」
第3位:「監督・ばんざい!」
第4位:「パッチギ! LOVE&PEACE」
第5位:「スパイダーマン3」
第6位:「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」
第7位:「酔いどれ詩人になる前に」
第8位:「輝ける女たち」
第9位:「ボビー」
第10位:「ブリッジ」
2007年7月14日、「ダイハード4.0」の鑑賞で、とうとう年間鑑賞本数が50本に到達。これは私が昨年、目標にしていた07年の総鑑賞本数である。が、既に7月の中旬で目標を達成してしまった。15日と16日も合わせて3本の映画鑑賞をしたことにより、06年と07年の累計も100本越えを果たす。私は半年に100本以上も鑑賞できるような評論家や、マニアな身分ではないが、時間が無い中よく頑張れていると思う。鑑賞内容は以下の通り。
本数内訳:
日本映画…23本(実写17本 アニメ6本)
外国語映画…30本
★番付内訳
★★★★★…19本
★★★★…15本
★★★…8本
★★…8本
★…3本
日本映画
・それでもボクはやってない…★★★★
・バッテリー…★★★★
・秒速5センチメートル…★★★★★
・蟲師…★★
・スターフィッシュホテル…★★★★★
・劇場版 灼眼のシャナ…★
・劇場版 キノの旅~病気の国~…★★
・東京タワー オカンとボクと、時々、オトン…★★★★★
・恋しくて…★★★★
・パッチギ!LOVE&PEACE…★★
・新SOS大東京探検隊…★★★
・しゃべれどもしゃべれども…★★★★★
・監督・ばんざい!…★
・鉄人28号 白昼の残月…★★★★
・カインの末裔…★★★
・キサラギ…★★★★★
・舞妓Haaaan!!!…★★★★
・秘密結社 鷹の爪~THE MOVIE~ 総統は二度死ぬ…★★★★
・きみにしか聞こえない…★★★
・サイドカーに犬…★★★★
・腑抜けども、悲しみの愛を見せろ…★★★★★
・図鑑に載ってない虫…★★★★
・16[jyu-roku]…★★★★★
日本映画・ベスト10 (7月18日現在)
第1位:「キサラギ」
第2位:「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
第3位:「16[jyu-roku]」
第4位:「しゃべれども しゃべれども」
第5位:「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
第6位:「スターフィッシュホテル」
第7位:「秒速5センチメートル」
第8位:「サイドカーに犬」
第9位:「恋しくて」
第10位:「バッテリー」
外国語映画
・マリー・アントワネット…★★★★
・幸せのちから…★★
・世界最速のインディアン…★★★★★
・ドリーム・ガールズ…★★★★★
・善き人のためのソナタ…★★★★★
・ナイト・ミュージアム…★★★★★
・ラストキング・オブ・スコットランド…★★★★★
・オール・ザ・キングスメン…★★★★
・ブラッド・ダイヤモンド…★★★★★
・ザメッティ…★★★★
・ブラック・ブック…★★★★★
・フランシスコの二人の息子…★★★★
・今宵、フィッツジェラルド劇場で…★★★★
・クイーン…★★★
・BABEL…★★★★★
・パラダイス・ナウ…★★★★★
・スパイダーマン3…★★
・輝ける女たち…★★
・ボビー…★★
・パイレーツ・オブ・カリビアン3…★★
・フランドル…★
・明日、君がいない…★★★
・主人公は僕だった…★★★
・あるスキャンダルの覚え書き…★★★★★
・それでも生きる子供たちへ…★★★★★
・ボルベール<帰郷>…★★★★
・傷だらけの男たち…★★★
・ダイハード4.0…★★★★
・ブリッジ…★★
・ハリーポッターと不死鳥の騎士団…★★★
外国語映画・ベスト10 (7月18日現在)
第1位:「世界最速のインディアン」
第2位:「善き人のためのソナタ」
第3位:「バベル」
第4位:「パラダイス・ナウ」
第5位:「ブラックブック」
第6位:「ブラッド・ダイヤモンド」
第7位:「ドリーム・ガールズ」
第8位:「ラストキング・オブ・スコットランド」
第9位:「それでも生きる子供たちへ」
第10位:「あるスキャンダルの覚え書き」
さて、21日以降も「ピアノの森」「フリーダム・ライターズ」「街のあかり」「ジーニアス・パーティ」「河童のクゥと夏休み」などなど、ミニシアターの話題作が目白押しです。個人的にはデヴィット・リンチの最新作「インランド・エンパイア」に期待。超期待。難解映画、大好きです。